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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第37章 【三十七話】交渉
 玲那の心情を鑑みたのかどうかはともかく、惣一郎は一つの提案をしてきた。

「山浦社長は二人の娘さんとの嫡出否認をするとおっしゃっていたが、結局、山浦社長が亡くなったことで不可能になった」
「……あの」
「ん、なんだね?」
「嫡出否認の手続きって道弘さまにしかできないことなのですか」
「母は自分が産んだ子だから否認することはできないよね」
「……そうですが、その」

 玲那は道弘の子も景臣の子も今現在、宿していないが、もしも周りがストップをかけなかったら、もしかしたら景臣の子を宿していた可能性はあった。
 どう話せばいいのか考えあぐねていると、景臣が口を開いた。

「──産んだ子に関しては否認しようがないが、前に話した三百日問題だろう」
「えぇ、そうです」
「なるほど、婚姻の解消もしくは取り消しの日から三百日以内に生まれた子は、遺伝学上の話を無視して、前の夫の子とするという話か」

 惣一郎は一度、うなずいてから続けた。

「夫婦関係がないと証明がなされれば問題ないが、許されないことだが、不倫の末に離婚して、不倫相手との子を宿していた場合、民法の上では前の夫の子となる。それが嫌で届けを出さず、無戸籍となる子も存在する」
「そんな」
「嫡出否認という制度は、そういうときに親子関係にはないと元夫が否認するための制度で……だけどまあ、いろいろと煩雑で、たとえばだが、DVが元で別れた場合、連絡を取りたくないから出生届を出さないというケースもある。この制度を利用すると、元夫に必ず知られてしまうからね」

 ということは。

「多香枝さんが嫡出否認の届け出というのは」
「できないね。まあ、できたとしても、今回のケースだと多香枝さんはしないと思うけれど」

 ということで、と惣一郎は玲那を見た。

「遺言書というのは大変重要で、しかも公正証書遺言だったので、偽造されていない。あれは山浦社長の思いすべてであると言っていい」
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