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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第38章 【三十八話】第二の殺人

玲那がその名を呼んでも、特に表情は変わらなかった。
少し前であったならば分かっていたほんの少しの変化も、今は景臣が意識して出さないようにしているからなのか、まったく分からない。
それとも、受け取る側の玲那の問題なのだろうか。
「あの……」
前であったなら、『どうしましたか』と聞いてきたのに、無言だった。
玲那と景臣の距離は一歩どころか、かなり遠くなってしまった。
そのことをこのタイミングで改めて突きつけてこなくてもいいのにと思いながら、玲那は口を開いた。
「確証はないのですが、このあたり、なんとなく……その、鉄臭く、ないですか」
できるだけ遠回しに玲那は思ったことを口にしたのだが、景臣は玲那の肩越しに奥へ視線を向けたのが分かった。玲那もつられて振り返り──……。
「っ!」
玲那たちが向かっていたのはあまり人が訪れることのない境内の端で、石垣状になった上に鬼子母神が立っていた。
その石垣に張り付けられるようにされた巨体。
──目は無念さの表れなのか、それとも驚きに見開かれたまま閉じられなかったのか、大きく開いていた。
そして口は中途半端に開かれ、赤い舌がそこから覗いて見えた。
喪服を着た腹部からは血が出ているようであったが、雨に打たれて薄まって、地面に流れ落ちていた。
それは奇しくも『父』である弘道と似たような状況。
どう見ても──川端依里佳の死体、だった。
思いもしない光景に、玲那は口を両手で覆った。
玲那のさしていた赤い傘は、水たまりの中へと落ちた。
少し前であったならば分かっていたほんの少しの変化も、今は景臣が意識して出さないようにしているからなのか、まったく分からない。
それとも、受け取る側の玲那の問題なのだろうか。
「あの……」
前であったなら、『どうしましたか』と聞いてきたのに、無言だった。
玲那と景臣の距離は一歩どころか、かなり遠くなってしまった。
そのことをこのタイミングで改めて突きつけてこなくてもいいのにと思いながら、玲那は口を開いた。
「確証はないのですが、このあたり、なんとなく……その、鉄臭く、ないですか」
できるだけ遠回しに玲那は思ったことを口にしたのだが、景臣は玲那の肩越しに奥へ視線を向けたのが分かった。玲那もつられて振り返り──……。
「っ!」
玲那たちが向かっていたのはあまり人が訪れることのない境内の端で、石垣状になった上に鬼子母神が立っていた。
その石垣に張り付けられるようにされた巨体。
──目は無念さの表れなのか、それとも驚きに見開かれたまま閉じられなかったのか、大きく開いていた。
そして口は中途半端に開かれ、赤い舌がそこから覗いて見えた。
喪服を着た腹部からは血が出ているようであったが、雨に打たれて薄まって、地面に流れ落ちていた。
それは奇しくも『父』である弘道と似たような状況。
どう見ても──川端依里佳の死体、だった。
思いもしない光景に、玲那は口を両手で覆った。
玲那のさしていた赤い傘は、水たまりの中へと落ちた。

