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第39章 【三十九話】永久就職

　玲那には、別に後ろ暗いことはなにもない。道弘も依里佳も殺していないのは自分でわかっている。
　しかし、調べられると困ることが一つだけある。言わずもがな、玲那の両親のことだ。
　というより、警察はすでに玲那の実家の状況を調べていて、玲那が二人を殺す充分な動機があると踏んで、尾行しているのだろう。
　学生時代もアルバイトをしたことがないし、今も結局、働きもしないで人のお金でのうのうと生きている身としては偉そうなことは言えないが、人を殺してお金を得たとしても、それはあぶく銭でしかないのではないかと玲那は思う。
　そう考えると、景臣が許してくれるかどうかはともかく、少し働いたほうがいいような気がしてきたのだが、さて、玲那になにができるのだろうか。
　そんなことをぼんやりと考えながら食べ、いつもどおりに部屋へと帰った。

　以前ならば帰ってくるなり景臣は玲那の服を脱がせていたのだが、ここ最近、触れても来ない。
　そのことを淋しいと思うほど、玲那は自分が贅沢になっていることに気がついた。

　最初は、一目見ることができればそれでいいと思った。
　ところが、景臣は玲那の護衛になるというのだ。それは玲那が外出をするときには、景臣が必ずついてくるということを意味していて……。なんだかデートみたいだと心密かにはしゃいでいた。
　それだけでも玲那にしてみれば奇跡的だったのに、道弘が死んで、そのポジションに景臣が自らつくと手を上げた。
　それは玲那にしてみれば、夢みたいな出来事で、だから恥ずかしくても、景臣に求められて嬉しかった。拒否をするなんて、考えてもいなかった。
　振り返ってみると、玲那は浮かれていたとしか思えなかった。
　景臣から来たからといって、玲那から手を伸ばしていいわけではなかったということを、失念していた。
　だから今の状況は、当然と言えば当然の状況。
　それでもやはり、玲那は淋しい。

「……景臣さん」