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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第46章 【四十六話】『安全宣言』
 それで、思い出したんだ、と景臣は続けた。

「社長が俺を雇ったのは、身の危険を感じているからだという、ぼんやりとした理由だった。そばにいて、強引なやり口を見て、なにを今さらと思っていたんだが、そちら方面ではなにも恐れていないというのはすぐに判明した。では、女性関係かと思ったんだが、社長は品行方正で、一夜限りの関係も見ている範囲ではなかった」

 仕事場、取引先、マンション以外は出掛けることがなかったという。休日も不自然なくらい、マンションにこもっていたという。

「隙のない男だったが、呼ばれたパーティはことごとく断っているのを見て、そこになにか理由がありそうだと思ったが、それ以上は分からなかった」

 ところが、取引先について行ったときに、うっすらと理由が分かったような気がした。

「『ここのところ、パーティでお目にかかりませんが、お身体の具合でも悪いのですか』と取引先で聞かれていた。それに対して、社長はそうではないと返事をしていたのだが、表情がひきつっていて……なにかあったのだなと察した」

 そうして調べてみると、とあるパーティを境に、ぱったりと出席しなくなっていたという。

「精力旺盛な社長の、不自然な行動。最後に出席したパーティ会場となったホテルに忘れ物をしたと嘘の電話を入れたところ、腕時計を忘れて帰っていたと言われ、取りに行った」

 まさか本当に忘れ物があるとは思わなかった、とは景臣。

「受け取りにいって、それが女物で、しかも特注品だったことに驚いたけど、もっと驚いたのは、その腕時計の持ち主が、憂佳だったということだ」
「え……そ、それでは、景臣さんは早くから憂佳さんが怪しいと、知っていた?」

 景臣は玲那の問いに、首を振った。

「いや、さすがにその時点では分からなかった。怪しいとは思ったけれど、俺はあの父娘がどういう付き合いをしているのかまでは把握していなかった」
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