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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第9章 【九話】襲撃
     □ ■ □

 どれくらいそうやっていたのか分からないが、ドアが控えめに叩かれ、そっと開かれた気配がした。

「玲那さん、いる?」

 声で小牧だと分かったけれど、玲那はソファの後ろから動けなかった。

「景臣、玲那さんはどこ?」
「部屋にいないのか?」

 ドアの向こうのやりとりに、玲那は自分の身体から力が抜けていくのが分かった。

「玲那さん、いらっしゃいますか」

 景臣の問いに、玲那はようやく小さな声で答えることが出来た。

「……はい」
「よかった。怪我はありませんか」
「……たぶん」

 玲那が大好きな景臣の低くて落ち着いた声を聞いて、ソファにつかまって立とうとしたが、腰が抜けたのか、力が入らなかった。情けないけれど、ソファの後ろに座っていたところで支障はないと判断して、玲那はそのままソファにもたれ掛かるようにして座っていることにした。
 そのとき、ふとスカートの裾にシミがあることに気がついた。先ほど、なにか分からないが液体を掛けられたときに散ったものだろう。匂いからしてコーヒーのようだ。しかもあれはホットであったようだから、頭からかかっていたらと思うとぞっとする。
 景臣はなにか気になるのか、鼻をクンと動かし、部屋の中を匂った。

「小牧、この部屋にコーヒーなんてあったか」
「コーヒー? ……そういえば、匂いがするね。だれか気を利かせて持ってきた……にしてはおかしいね。テーブルの上にカップはないし、今回のこと、ぼく以外、だれも知らないはずなんだけどな」

 小牧の一言に、玲那はまた先ほどのことを思い出し、身体が震えた。

「たまに集中したいときにこの部屋を予約して使うことはあるけど、そういう時はだれも近寄らないんだよね。だから今回もそうだと思われていたはずだよ」
「先ほど、電話で少しの間、部屋から離れた隙にだれか来たようなんだが、タイミング的におまえが玲那さんのために、だれかに飲み物を持って行くように」
「指示は出してないよ」

 それならば、あれはだれだったのだろうか。

「白衣を着たおかしな人物が部屋の外に立っていた。追いかけたんだが、白衣を脱ぎ捨てて、人混みに紛れて逃げられた」
「景臣が目を離した隙に来たの?」
「そうだ」
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