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契約は継続します──報酬はあなたの身体で【完結】
第13章 【十三話】『筒宮』の名の重み
 そもそもがその時点では、道弘と改めての顔合わせの日程も決まっていなかった。しかももしかしたら破談になるかもしれないという可能性だってあったのだ。
 そんなあやふやな段階で、道弘の元妻かどうか分からない人物が玲那を訪ねてきたと言ったところで、証拠はなかったし、結婚が嫌でそんなことを言っているのだろうと思われて、相手にもされなかっただろう。
 現に、その時以来、玲那の元には元妻は現れていないし、結婚式自体は滞りなく行われた。

「山浦社長が危惧していたのは、もしかして、前の奥さまだったのか?」
「……それなら、社長自身に護衛を付けないで、玲那さんにだけ付けた理由が分かりますね」
「うーむ……」

 景臣の父は唸ると、腕を組んでしばらくなにか考えているようだった。

「山浦社長が離婚をしたのは、たしか十年前。二人のお嬢さんが成人したのを機に、離婚した」
「離婚の原因は?」
「……知っているけど、そこはプライバシーに配慮して、詳しくは語れない。離婚も、かなり長い時間をかけた協議離婚だった」

 お互いが合意の上での円満離婚だった、と付け加えられた。

「玲那さんと再婚することで、なにかあったという可能性は?」
「……離婚してすでに十年経っているというのに?」
「離婚した理由が分からないのでなんとも言えませんが、再婚しないという条件があったりしませんでした?」

 景臣の質問に対して、景臣の父は首を横に振った。

「そこは制限できないよ」
「しかし、社長の前妻が玲那さんに結婚しないように言ってきたのが引っかかります」
「……そうだな」
「復縁話が出ていたということは?」

 景臣の質問に、景臣の父は即座に首を振った。

「それはない」
「どうして言い切れるのですか」
「もしもそういう話があれば、一番に相談があるはずだからね」
「そうですか」

 景臣は納得がいっていないようではあったが、少しの間であったが道弘の側にいた景臣は道弘の周辺に女性の影があるようにも見えなかった。

「そういえば、山浦社長は、玲那さんとの結婚の際にある条件を出していたのは知っているかい?」
「……ある条件?」
「そう」
「思い当たるような、ないような……」
「答えは、筒宮の名を名乗ることの許可だよ」
「え……」
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