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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 下弦の月は日毎に痩せていくが、それでも、狭い風呂場を照らすには十分な明るさだ。この時代、作り付けの風呂というものはなく、湯を汲んだ桶を湯舟として使用する。たいして大きくもない桶は彩里と俊秀が二人入れば一杯で、向かい合う二人の身体はどうしても触れ合ってしまう。
 ほの白い湯けむりの幕を通して、彩里の身体がぼんやりと浮かんでいる。祝言を挙げてまだ半月余りにしかならないが、彩里の身体は急速に大人の女らしい丸みを帯びつつある。
 正直言えば、初夜の床で彩里を初めて抱いた夜、俊秀は彩里の身体のあまりに幼いのに戸惑った。十六と聞いていたはずなのに、まだ十二、三ほどの成長しか見られなかった。
 このような幼い身体を果たして穢してしまっても良いのかと真剣に悩んだほどだ。
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