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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 俊秀は悪戯心を起こし、ついと手を伸ばし
「あ、あうっ」
 悩ましい声を上げ続ける彩里に、俊秀が片眼を瞑った。
「意地悪をされても、彩里は歓んでいる」
「もう、知りません!」
 彩里は頬を膨らませ、真っ赤になった。
 閨の中で見せる反応はもう完全に男を知った女のものだが、その合間の表情はまだまだあどけない少女のものだ。彩里は実にくるくるとよく表情を変え、見ていて飽きない。
 艶めかしい大人の女と愛くるしい少女が妻の中に同居している。どちらも俊秀が愛してやまない彩里に違いない。その極度の違いもまた俊秀の心を捉えて離さない。
 突如として、俊秀は湯を真正面からかけられた。彩里が先刻の意趣返しに仕掛けてきたのだ。
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