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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
「こいつ、やったな」
 そう叫んだ俊秀の顔にまた湯の礫(つぶて)が飛んでくる。
 二人はしばらく歓声を上げながら、まるで幼子たちのように湯を掛け合った。
 彩里のささやかな動きの一つずつが、頭上の明かり取りの小窓を通して差し込む月明かりを照り返して輝きを放つ。
 明かりは豊かな胸の膨らみを光らせ、しなやかな腕を愛撫し、形の良い長い脚を浮かび上がらせている。
 輝かしくも艶めかしく、爪を研いで獲物を待ち受ける山猫のようだった。
 俊秀は無意識の中に彩里の右腕を眺めていた。視線に勘づいたのか、彩里が小首を傾げる。
「どうかしたの?」
「この傷痕―」
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