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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 それが、森の掟であり、彩里たち九(ク)尾(ミ)狐(ホ)の世界のならわしだ。
 が、嫌な予感は杞憂にすぎなかったようで、俊秀はいつもの薬草摘みに彩里を伴っただけのことだった。
 崔(チェ)俊秀、私の良人。俊秀のことを考えただけで、胸の鼓動が速くなってしまうのは、いつまで経っても変わらない。あのひとの瞳に自分が映っていると考えただけで、幸せになる。
 狐の身であることをひた隠して俊秀の前に現れてひと月以上が経過した。すべてが彩里の望みどおり―いや、それ以上に進んだ。
 彩里がすべてを棄てて山を降りてきたのは、ただ俊秀に逢いたかったから。何も最初から俊秀の妻になろうなどと大それた野望を抱いていたわけではない。
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