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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
それが、俊秀から出逢って二度めで求婚され、その数日後には祝言まで挙げた。今では俊秀は彩里の良人であり、彩里は彼の妻だ。
俊秀が彩里の正体を見抜かない限り、彩里は大好きな彼の傍にいつまでも居続けられる。このまま刻が流れれば、彩里が俊秀の子の母となるのも夢ではない。人間の姿に変化した九尾狐が人間の男と交われば、子が生まれる。生まれた子は仮の姿として人間であっても、その本質はやはり母親同様、九尾狐である。だが、人界に降りて三十年を無事に過ごし、その間、正体を気取られずに済んだ暁には、望めば本当の人間になれる。―そう、九尾狐たちの間では伝えられていた。
むろん、それはあくまでも古からの伝承であり、真実かどうかまでは判らない。というのも、かつて人界に三十年以上もいた狐は存在しないからだ。
俊秀が彩里の正体を見抜かない限り、彩里は大好きな彼の傍にいつまでも居続けられる。このまま刻が流れれば、彩里が俊秀の子の母となるのも夢ではない。人間の姿に変化した九尾狐が人間の男と交われば、子が生まれる。生まれた子は仮の姿として人間であっても、その本質はやはり母親同様、九尾狐である。だが、人界に降りて三十年を無事に過ごし、その間、正体を気取られずに済んだ暁には、望めば本当の人間になれる。―そう、九尾狐たちの間では伝えられていた。
むろん、それはあくまでも古からの伝承であり、真実かどうかまでは判らない。というのも、かつて人界に三十年以上もいた狐は存在しないからだ。