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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 ふくよかな乳房、くびれた腰からなだらかな傾斜を描いて続く臀部、更にその下の慎ましく淡い繁み、すらりと伸びた脚。
 ひと月前に彼に初めて抱かれて震えていた幼い少女ではなく、彼の手によって大人になった女の見事な肢体だ。俊秀は半ば惚けたように彩里の美しすぎる身体に眼を奪われた。
 この色香溢れる女が俺の女房なのだ。
 そう叫んで回りたかった。
 ここで終われば、すべては笑い話で終わったはずだ。自分の妻の後をつけていった先で、更に妻の裸を盗み見てヤニ下がっている亭主―これが赤の他人なら、見て嗤ってやるところなのだが。
 ふいに、冷たい夜風が吹き渡った。風は秋桜を揺らし、彩里の濡れた髪を嬲ってゆく。
 俊秀は咄嗟に前に一歩踏み出した。
 いけない。このままでは、彩里が風邪を引いてしまう。
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