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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 一刻も早く濡れた身体を拭いて、温めてやらなければ。そこまで考えて、彼は我知らず身体の芯が熱くなった。
 冷えた身体を温めてやるには、彩里を抱くのがいちばんだ。あの艶めかしい身体を組み敷き、魅惑的な陰影を描く繁みの奥に息づく狭間に自分自身を深く沈み込ませるのを想像しただけで、更に身体が火照ってくる。
 こんなときに、何を馬鹿なことを考えてるんだ、俺は。
 彩里を見ていると、どうして押し倒すことばかり考えてしまうのかと我ながら呆れたその時。
 両の腕を高く持ち上げた彩里の姿が眼に入った。彩里は両手を掲げた状態で、降り注ぐ月光を浴びるように仰のいている。
 光の雨が彩里の白い裸体を包み込んでいる様は、さながら一幅の絵画に勝るとも劣らない。だが、変化は突然、起き始めた。
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