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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 そして、月光を浴びながら九尾狐に姿を変えた妻。
「何故、眼を閉じるの? 俊秀」
 何も知らない彩里の無邪気な声音が俊秀の心を切り裂く。
 俺は、お前がたとえ狐であろうが狸であろうが、そんなことはどうでも良い。だが、彩里、俺は果たして、お前をすべてのものから守ってやれるだろうか?
 これから三十年もの間、お前の秘密を知らないふりを続けられるだろうか? 
 俺が真実を知ったことに気づけば、お前は俺の許から去ってゆくだろう。
 俺は、そんなにことには堪えられない。お前を失って、俺は一体、どうやって生きてゆけば良い? 教えてくれ、彩里。
 俊秀は歯を食いしばって眼を開けた。
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