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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
その見返りとして、そなたには相応の金子と更には、兵(ヒヨン)判(パン)大(テー)監(ガン)さま(ナーリ)のご舎弟の屋敷にも出入りできるよう取り計らうて下されるというのだ。どうだ、けして悪い話ではあるまい? 女房の方は、明朝には輿でちゃんと家まで送り届ける」
「馬鹿にするなッ!」
 俊秀が怒鳴った。滅多に人に声を荒げない俊秀にしては稀有なことだ。つまり、そこまで烈しく憤っているということなのだ。
 膝の上で揃えて握りしめた両の拳が白くなっている。
「彩里は犬や猫の仔ではないし、ましてや玩具じゃない。気紛れに抱いて、さんざん慰み者にしておいて、気が済んだらポイ捨てだなんて、冗談でも止してくれ。妻を差し出して、その代わりに金を受け取れだと? 馬鹿も休み休み言えよ。俺は貧乏でも、そこまで落ちぶれちゃいねえや」
 声が戦慄いた。
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