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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 彩里は二人から少し離れた場所に控えめに座っているが、何も言わない。
 可哀想に、さぞ衝撃を受けているに違いない。できるなら、彩里にこんな残酷な話を聞かせたくはなかった。
「俺の返事はこれだけだ。判ったなら、とっとと帰って兵判大監に今の返事をそっくりそのまま伝えてくれ」
 俊秀が怒鳴るように言うと、執事は呆れたように鼻を鳴らした。
「もう少し利口な若者かと思っていたが、やはり愚かだな。うちの旦那さまに真っ向から逆らって、ただで済むはずもなかろうに」
 執事は、馬鹿にしたように大仰に肩を竦めて立ち上がる。
 俊秀は憮然として横を向いていた。
 と、彩里が口を開いた。
「申し訳ありませんが、ほんの少し時間を下さいませんか?」
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