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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
小声で告げる彩里の表情は、これまで見たことがないほど真剣だった。
「―あいつがやりたければやれば良い。お前を差し出すくらいなら、俺は歓んで死んでやるよ」
「馬鹿なことを言わないで。死んだら、そこでおしまいよ。すべてが終わってしまうわ。あなたはそれで良いの? 亡くなったお父さんの跡を継いで立派な薬売りになるのではなかったの?」
「なら、俺にどうしろと? 金と引き替えに彩里をあの助平爺(じじい)に差し出せと言うのか!」
俊秀は辛そうに眼を伏せたかと思うと弾かれたように顔を上げた。
「俺と一緒に死んでくれ。なっ、彩里」
世に二つとない名案を思いついたとでもいうように、俊秀が勢い込む。
「―あいつがやりたければやれば良い。お前を差し出すくらいなら、俺は歓んで死んでやるよ」
「馬鹿なことを言わないで。死んだら、そこでおしまいよ。すべてが終わってしまうわ。あなたはそれで良いの? 亡くなったお父さんの跡を継いで立派な薬売りになるのではなかったの?」
「なら、俺にどうしろと? 金と引き替えに彩里をあの助平爺(じじい)に差し出せと言うのか!」
俊秀は辛そうに眼を伏せたかと思うと弾かれたように顔を上げた。
「俺と一緒に死んでくれ。なっ、彩里」
世に二つとない名案を思いついたとでもいうように、俊秀が勢い込む。