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第4章 宿命

　ウォーとも何とも形容のし難い咆哮を上げ、俊秀はその場にくずおれた。拳を何度も地面に打ちつける。爪は剥がれ、紅い血が滲み出たが、俊秀は狂ったように拳で地面を打ち続けた。
　もしかしたら、自分は本当に狂ってしまったのかもしれない。最愛の女をみすみす権力者に差し出しておいて、何でおめおめとこのまま生き存えられよう。
　そのときの彼は、確かに尋常ではなかったに違いない。騒ぎを聞きつけて様子を見にきた隣家の女房がまるで本物の気違いを眼にするように怯えた眼で見ている。
　俊秀が女を見ると、彼女はピクリと飛び上がり、慌てて家に駆け戻った。
　こいつは良い。俺もとうとうヤキが回ったな。本物の気狂いと間違われちまったみたいだ。