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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 彩里は髪に挿した銀の簪を一挙に引き抜き、真上から覆い被さる男の首筋に突き立てた。
 男のがっしりとした身体が急速に力を失ってゆく。その隙に急いで下から這い出し、部屋の扉を音を立てて開けて外に飛び出る。
 外は雪が本降りになっていた。既に庭は、うっすらと雪化粧している。流石に、満月は厚い雲に閉ざされて見えなかった。
「おのれ、このまま、おめおめと逃がすと思うなよ?」
 ソンイが首から血を溢れさせながら、追いかけてくる。
 何という執念深い男だろう。
 庭に裸足で降り立った彩里を追って、ソンイも庭に降りた。
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