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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 あまりにも長すぎる孤独から漸く現実に立ち戻ったときには、既に外はぬばたまの闇に覆われる時間になっていた。陽の落ちたのにも気づかず、真っ暗な闇の中で一人、膝を抱えている自分に気づいた。
 寒い、寒くて、しょうがない。
 オンドルをつけるのも忘れた部屋の中は、怖ろしいほど冷え切っている。全身をゾクリと寒気が走り、今更ながらに、風邪がまだ治りきっていなかったことを思い出した。
 彩里が傍にいたら、
―何て無茶なことするの。温かくしなきゃ駄目よ。
 と、可愛らしい顔で怒るに違いない。
 彩里、ああ、彩里や。
 今頃、お前はどうしている?
 彩里のことを考えただけで、胸が波立ち、かきむしられるようだ。そして、今が夜なのを改めて思い出した。
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