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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
彩里が行くと言ったのは、他ならぬ俊秀のためであるのは判っていたのだから。
ふと、俊秀は視線を上げた。入り口の扉の向こうに、人影が映っている。
小柄なその人影を認めた瞬間、彼は弾かれたように走って扉を開けていた。
「―彩里!」
俊秀は彩里の華奢な身体をきつく抱きしめた。ひとしきり抱擁を交わした後、彼は自分の手が血に濡れているのに気づき、愕然とした。
「彩里、お前―、怪我をしているのか?」
雪の降る中を逃げてきたのだから、髪に雪が乗っているのは当然だとしても、彩里の格好はあまりにも無惨すぎた。
白の夜着は上衣を辛うじて纏ってはいるものの、肩から羽織っているというだけで、あちこち引き裂かれ、片袖は取れかかっている。あまつさえ、その夜着は血濡れていた―。
ふと、俊秀は視線を上げた。入り口の扉の向こうに、人影が映っている。
小柄なその人影を認めた瞬間、彼は弾かれたように走って扉を開けていた。
「―彩里!」
俊秀は彩里の華奢な身体をきつく抱きしめた。ひとしきり抱擁を交わした後、彼は自分の手が血に濡れているのに気づき、愕然とした。
「彩里、お前―、怪我をしているのか?」
雪の降る中を逃げてきたのだから、髪に雪が乗っているのは当然だとしても、彩里の格好はあまりにも無惨すぎた。
白の夜着は上衣を辛うじて纏ってはいるものの、肩から羽織っているというだけで、あちこち引き裂かれ、片袖は取れかかっている。あまつさえ、その夜着は血濡れていた―。