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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 俊秀の眼を気にしてか、彩里はしどけなく乱れた衿許を必死に隠そうとしている。
 俊秀の中に彩里への憐憫と愛情が迸るように込み上げてきた。
「ごめんな。本当に済まない。俺のために兵曹判書の屋敷に行ってくれたのに、お前をほんの少しでも疑うようなことを言ってしまった」
 彩里のか細い身体を抱きしめると、腕の中でかすかなすすり泣きが聞こえてきた。
 もう離すものか。天が二人を分かつまで、俺はこの女を絶対に傍から離しはしない。
 俊秀は改めて心に誓ったのだった。 
「さあ、早く中に入ろう」
 彩里を抱きかかえるようにして、部屋の中に入った。
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