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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 清潔なチマチョゴリに着替えた彩里は、俊秀に向かい合う形で片膝をついて座った。
「もう、ここにはいられないわ」
 意外すぎる言葉が耳を打ち、物想いに耽っていた俊秀はハッと面を上げた。
「何故? どうして、そんなことをいきなり言い出すんだ」
「兵曹判書を殺したときのことで、あなたにまだ一つだけ話していないことがあるの」
 俊秀の視線から逃れるように、彩里は眼を伏せた。
「あいつの息の根を止めたすぐ後、女中が様子を見にきたわ。私があいつの傍にいるところをその女中に見られてしまったのよ」
「つまり、お前が兵曹判書を殺害したことを、知られてしまったということか? だが、それは安心していて良いんじゃないのかと俺は思う。あそこの奥方は随分と体面を重んじる人だからな。
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