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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
望んだ姿に自在に姿を変えられる―、その言葉で漸く腑に落ちたことがあった。恐らく、彩里と出逢う前に、財布を掏られ困っていた俊秀を助け、盗まれた財布を取り返してくれたあの少年も彩里だったのだろう。
少年の右手首に巻いていた布切れに見憶えがあったのも当たり前といえば当たり前だ。あの布は俊秀自身が自らの上着を裂いて狐の右脚に巻いてやったのだから。今なら、人間の娘の姿となった彩里に初めて逢った時、右腕に布を巻いていた理由もすぐに理解できる。
「そのことなら、もう大分前から気づいていたよ」
彩里が眼を見張った。
「いつから?」
俊秀は首を傾げた。
少年の右手首に巻いていた布切れに見憶えがあったのも当たり前といえば当たり前だ。あの布は俊秀自身が自らの上着を裂いて狐の右脚に巻いてやったのだから。今なら、人間の娘の姿となった彩里に初めて逢った時、右腕に布を巻いていた理由もすぐに理解できる。
「そのことなら、もう大分前から気づいていたよ」
彩里が眼を見張った。
「いつから?」
俊秀は首を傾げた。