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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
「九尾狐はその姿を一度、誰かに見られたら、もう、人界にはいられないの。それはつまり、幾らあなたが良いと言ってくれても、私の正体をあなたに知られてしまったら、もう傍にはいられないということでもある。哀しいけれど、仕方のないことなの。―それが九尾狐の掟だから」
 彩里の表情も口調も―すべてに諦観が滲み出ていた。
 駄目だ、行かせない! この女は俺のものだ。
 ふいに烈しい所有欲に支配され、俊秀は叫んだ。
「お前は俺が去れと言わない限り、ずっと傍にいると言ったじゃないか」
 彩里は困ったように微笑む。
「無理を言わないで、困らせないでちょうだい。掟を破れば、私だけでなく、あなたも死ななければならないわ。
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