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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
その瞳を見た瞬間、彼は既に何を言おうと、愛する女の気持ちを変えられないと悟った。
「私はあなたに生きていて欲しいの。たとえ離れ離れになっても、あなたがこの地上のどこかで生きていると思えば、私も淋しいけれど我慢して生きてゆける。だから、一緒に死のうなんて言わないで、これからは一人で生きていって」
俊秀はどこか投げやりな口調で言った。
「お前は残酷なことを言うんだな。お前を失えば、俺は生きながら死んだも同じだ。お前のいないこの世なぞ、生きていても意味がない。いっそのこと、今すぐにでも殺して貰った方が本望さ」
と、彩里の瞳に強い光がまたたいた。いつになく強い物言いは、まるで母親か姉が言うことをきかない弟を窘めるようだ。
「私はあなたに生きていて欲しいの。たとえ離れ離れになっても、あなたがこの地上のどこかで生きていると思えば、私も淋しいけれど我慢して生きてゆける。だから、一緒に死のうなんて言わないで、これからは一人で生きていって」
俊秀はどこか投げやりな口調で言った。
「お前は残酷なことを言うんだな。お前を失えば、俺は生きながら死んだも同じだ。お前のいないこの世なぞ、生きていても意味がない。いっそのこと、今すぐにでも殺して貰った方が本望さ」
と、彩里の瞳に強い光がまたたいた。いつになく強い物言いは、まるで母親か姉が言うことをきかない弟を窘めるようだ。