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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
 小鳥の囀りが頭上でしきりに聞こえてくる。
 森は今、また、実りの季節を迎えようとしていた。秋の色に染まった樹々があちこちに見かけられる。
 俊秀は忙しなく視線を周囲に巡らせながら、我知らず大きな息を吐いた。
 やはり、何度ここに来ても、彩里には逢えない。愛しい妻が彼の許から去って月日はめぐり、既に三度めの秋が来た。
 その間、季節を問わず、彼は数え切れないほど山に登った。商売物の薬草を摘むというよりは、むしろ、妻の姿をひとめ見たいという切なる願望に突き動かされての山通いであった。
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