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九尾狐(クミホ)異伝
第4章 宿命
―嬉しかったわ、今のあなたの言葉を私はこれから先もずっと忘れないでしょう。私の正体を知ってもなお、あなたが傍にいても良いと言うとは、正直なところ、私は考えていなかったの。
 別れ際の妻の言葉が今更ながら耳奥に切なく甦る。
 当たり前じゃないか、彩里。俺にとって、お前は生涯の想い人、ただ一人の女なんだ。お前が九尾狐であろうが何であろうが、そんな些細なことで俺の気持ちが変わるなんて、どうして、お前はそんなことを考えたんだ?
 心の中で最愛の妻に呼びかける。
 たとえ狐の姿でも良いから、ひとめ妻に逢いたい。切ないほどに祈っても、彩里は彼の前に姿を現してはくれなかった。
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