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九尾狐(クミホ)異伝
第1章 忘れ得ぬ人
―息子に瓜二つの若者に母が助けられたのも、何かの縁だろう。もし困ったことがあれば、いつでも訪ねてきなさい。及ばずながら力になろう。
 とまで言ってくれた。
 俊秀は平素から、困っている人には進んで救いの手を差しのべるようにしている。それは、彼の亡くなった母親がいつも言い聞かせていたことでもあった。高い薬代が払えない客にただ同然で薬を分け与えるため、俊秀の儲けはいつもたいした額にはならない。
 従って、彼はいつまで経っても貧乏暮らしとは縁を切れないのだが、人助けができるほどの余裕があるなら結構と、俊秀は楽観的に考えていた。
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