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九尾狐(クミホ)異伝
第1章 忘れ得ぬ人
「おい、何をする。止せ、止めろ」
俊秀が叫ぶのにも頓着せず、男は走ってきたままの勢いで俊秀にぶつかった。真正面からまともに衝突されたものだから、堪らない。
ましてや、ぶつかってきた相手は、天を衝くような大男で、身の丈だけではなく横幅も半端でなく大きい。俊秀自身も結構上背はあるし、逞しい体軀をしているはずだが、これだけの巨体と正面衝突しては流石に敵うはずもなかった。
「す、済まねえ」
男は俊秀と眼線を合わせようともせず、ひと言詫びただけで再び走り去った。けして裕福でない―むしろ、俊秀と同じ、その日暮らしの庶民であるとは判る身なりで、まともな勤め人や職人というよりは、大道芸人か用心棒といった方がふさわしいようだった。
俊秀が叫ぶのにも頓着せず、男は走ってきたままの勢いで俊秀にぶつかった。真正面からまともに衝突されたものだから、堪らない。
ましてや、ぶつかってきた相手は、天を衝くような大男で、身の丈だけではなく横幅も半端でなく大きい。俊秀自身も結構上背はあるし、逞しい体軀をしているはずだが、これだけの巨体と正面衝突しては流石に敵うはずもなかった。
「す、済まねえ」
男は俊秀と眼線を合わせようともせず、ひと言詫びただけで再び走り去った。けして裕福でない―むしろ、俊秀と同じ、その日暮らしの庶民であるとは判る身なりで、まともな勤め人や職人というよりは、大道芸人か用心棒といった方がふさわしいようだった。