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九尾狐(クミホ)異伝
第1章 忘れ得ぬ人
赤銅色に灼けた膚とてらてらと脂ぎった禿頭は、茹でた蛸を連想させる。眼付きはおどおどと落ち着かず、険悪でありながらも大悪党にはなり切れない小心さも感じられた。
「一体、何なんだ。あれは」
流石に、あの男の様子からして身内の急難を聞きつけたわけではないと察せられる。
俊秀は大男のぶつかった左腕をさすりながら、眉をしかめた。
それでなくとも、十一月初めとは思えない暑い一日となり、全身にじっとりと汗が浮かんでいた。あの大男のせいで余計に暑苦しくなったようで、俊秀は額に滲んだ汗を忌々しそうに拭う。
思いついて袖に巾着と一緒に突っ込んである手巾を出して拭こうとした。が、幾ら手を入れてまさぐってみても、手巾は見当たらない。いや、手巾どころではない、巾着までもが―。
「一体、何なんだ。あれは」
流石に、あの男の様子からして身内の急難を聞きつけたわけではないと察せられる。
俊秀は大男のぶつかった左腕をさすりながら、眉をしかめた。
それでなくとも、十一月初めとは思えない暑い一日となり、全身にじっとりと汗が浮かんでいた。あの大男のせいで余計に暑苦しくなったようで、俊秀は額に滲んだ汗を忌々しそうに拭う。
思いついて袖に巾着と一緒に突っ込んである手巾を出して拭こうとした。が、幾ら手を入れてまさぐってみても、手巾は見当たらない。いや、手巾どころではない、巾着までもが―。