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九尾狐(クミホ)異伝
第1章 忘れ得ぬ人
俊秀は唖然として、自分を追い抜いていった人影を見つめた。青年―いや、あのか細い身体つきではまだ少年と言った方がふさわしいに違いない。俊秀よりも更に若い男が俊秀を追い抜き、あの蛸に接近しつつあった。
少年は忽ちの中に蛸男に追いつき、むんずとその首根っこを押さえた。
「財布を出せ」
捕まった蛸入道はその場にうつ伏せた格好で両手を後ろにねじ上げられている。華奢な少年がその上にどんと乗っていた。
「おい、貴様は先刻、薬売りから財布を盗んだはずだ。財布を出せ」
少年が凄みのある声で脅すように言っても、蛸男はビクともしない。その点は流石に悪党である。
「ヘン、とんだ言いかがりだ。俺がいつ、薬売りの財布を盗ったっていうんだ? 何か証拠でもあるのか?」
少年は忽ちの中に蛸男に追いつき、むんずとその首根っこを押さえた。
「財布を出せ」
捕まった蛸入道はその場にうつ伏せた格好で両手を後ろにねじ上げられている。華奢な少年がその上にどんと乗っていた。
「おい、貴様は先刻、薬売りから財布を盗んだはずだ。財布を出せ」
少年が凄みのある声で脅すように言っても、蛸男はビクともしない。その点は流石に悪党である。
「ヘン、とんだ言いかがりだ。俺がいつ、薬売りの財布を盗ったっていうんだ? 何か証拠でもあるのか?」