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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
蛸のような大男に財布を盗られたのは三日前のことだが、あの日は結局、呑みにゆかなかった。折角なら滅多にない幸運を誰かと分かち合いたいと思い、友人を誘って今夜、仕事帰りに馴染みの酒場に繰り出したのだ。
酒が好きとはいえ、俊秀は別に妓房(キバン)に行きたいとは思わない。女ではなく、純粋に酒が好きなのだ。今夜もヨンスから
―お前、一度、妓房に行ってみろよ。お前のような若くて眉目の良い男なら、一度くらいは妓生が自分の金で遊ばせてくれるぜ。
と、ひやかされたものの、俊秀にすれば、その日暮らしがやっとの露天商が妓生遊びなぞ、とんでもないことだ。更に、俊秀は金で女の身体を買うという行為には、どうにも我慢ならなかった。男女の行為というものは、男と女が気持ちを通わせた上で、自然にそういう関係になるのが望ましいと考えているのだ。
酒が好きとはいえ、俊秀は別に妓房(キバン)に行きたいとは思わない。女ではなく、純粋に酒が好きなのだ。今夜もヨンスから
―お前、一度、妓房に行ってみろよ。お前のような若くて眉目の良い男なら、一度くらいは妓生が自分の金で遊ばせてくれるぜ。
と、ひやかされたものの、俊秀にすれば、その日暮らしがやっとの露天商が妓生遊びなぞ、とんでもないことだ。更に、俊秀は金で女の身体を買うという行為には、どうにも我慢ならなかった。男女の行為というものは、男と女が気持ちを通わせた上で、自然にそういう関係になるのが望ましいと考えているのだ。