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九尾狐(クミホ)異伝
第1章 忘れ得ぬ人
彩里の小さな身体に緊張が漲り、毛が逆立つ。だが、その人間の若い男は微笑み、彩里に向かって優しく言った。
「可哀想に、猟師の罠にかかったんだな」
まだ二十歳を幾つも過ぎていない男の顔が曇り、彩里を差し招く。
「おいで、怖がらなくて良い。家に連れて帰って、その傷の手当てをしてあげよう」
人間の子に言い聞かせるように言う男の顔をよく見ようと視線を動かした瞬間、彩里はハッと息を呑んだ。
秋に色づく色とりどりの宝玉のように美々しい木の葉よりも、なお彩里の心を捉えて離さない美しい若者が優しげな笑みを浮かべている。
彩里は心を奪われたように、男の端整な面に見入った。それでもなお、人間に対する警戒心を棄て切れず、彩里はじいっと美しい若者を見つめていた。
「可哀想に、猟師の罠にかかったんだな」
まだ二十歳を幾つも過ぎていない男の顔が曇り、彩里を差し招く。
「おいで、怖がらなくて良い。家に連れて帰って、その傷の手当てをしてあげよう」
人間の子に言い聞かせるように言う男の顔をよく見ようと視線を動かした瞬間、彩里はハッと息を呑んだ。
秋に色づく色とりどりの宝玉のように美々しい木の葉よりも、なお彩里の心を捉えて離さない美しい若者が優しげな笑みを浮かべている。
彩里は心を奪われたように、男の端整な面に見入った。それでもなお、人間に対する警戒心を棄て切れず、彩里はじいっと美しい若者を見つめていた。