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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
それでも、女将の作る手料理が美味いと評判で、客足はまずまずといったところだ。俊秀も酒は滅多に呑まなかったけれど、自分で飯を拵えるのが億劫なときには、飯だけ食べによくこの酒場に来る。
好きなときに自分で飯を作り、食べる。気ままな暮らしもそれはそれで悪くはない。しかし、時には、その自由を思いきりに満喫できるはずの一人暮らしが無性に侘びしく思えてならないときがあった。
俊秀の父親は早くに亡くなっている。何でも流行(はやり)風邪(かぜ)をこじらせたというが、そのため、母親は随分と苦労して俊秀を育ててくれた。父も薬売りだったため、俊秀は迷わず父と同じ仕事を選んだものの、母にはその仕事はきつすぎ、一時、商売は休んでいた。
好きなときに自分で飯を作り、食べる。気ままな暮らしもそれはそれで悪くはない。しかし、時には、その自由を思いきりに満喫できるはずの一人暮らしが無性に侘びしく思えてならないときがあった。
俊秀の父親は早くに亡くなっている。何でも流行(はやり)風邪(かぜ)をこじらせたというが、そのため、母親は随分と苦労して俊秀を育ててくれた。父も薬売りだったため、俊秀は迷わず父と同じ仕事を選んだものの、母にはその仕事はきつすぎ、一時、商売は休んでいた。