この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
母は手内職を細々と続けて得た乏しい収入で、俊秀を育て上げたのだ。苦労のしどおしが祟ったのか、母は俊秀が十七になる直前、突如として倒れ亡くなった。医者の診立てによれば、卒中の発作を起こしたとのことだった―。
ほんの一年前に薬売りを始め、漸く仕事が軌道に乗り始めた矢先、母は亡くなった。これから稼いで、今まで苦労させた分の孝行をするつもりでいたのに、それも叶わなくなった。
自分はつくづく肉親の縁(えにし)には薄い生まれなのだなと、その時、思ったものだ。ゆえに、俊秀は結婚は必ずしたい―できれば早くに―と思っていた。妻を持ち、子が生まれれば、俊秀にも新しい家族ができる。
稼ぎもろくにないのに、妻子を養うのは大変ではあろうが、守るべき存在ができれば、働き甲斐もあろうというものだ。
ほんの一年前に薬売りを始め、漸く仕事が軌道に乗り始めた矢先、母は亡くなった。これから稼いで、今まで苦労させた分の孝行をするつもりでいたのに、それも叶わなくなった。
自分はつくづく肉親の縁(えにし)には薄い生まれなのだなと、その時、思ったものだ。ゆえに、俊秀は結婚は必ずしたい―できれば早くに―と思っていた。妻を持ち、子が生まれれば、俊秀にも新しい家族ができる。
稼ぎもろくにないのに、妻子を養うのは大変ではあろうが、守るべき存在ができれば、働き甲斐もあろうというものだ。