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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
ヨンスの住まいは俊秀の住む小さな貸家からさほど離れてはおらず、本当なら帰り道は一緒なのだ。しかし、ヨンスには馴染みの妓生がいて、これからその女の許に寄るのだということで、酒場を出たところで別れた。むろん、露天商の主が通うのは高級妓楼ではなく、下級の見世にすぎない。
それでも、ヨンスは自分よりひと回りも若い安女郎にぞっこんで、せっせと通い詰めていた。狭い家には、もうすぐ妊娠八ヵ月めに入る妻と、五歳と三歳の幼子が待っているというのに―。
俊秀は立ち止まって首を振りながら、空を見上げた。菫色の空を飾るのは、女人の眉のように繊細な月。月を遠慮がちに取り囲むように、星が弱い光をまたたかせている。
それでも、ヨンスは自分よりひと回りも若い安女郎にぞっこんで、せっせと通い詰めていた。狭い家には、もうすぐ妊娠八ヵ月めに入る妻と、五歳と三歳の幼子が待っているというのに―。
俊秀は立ち止まって首を振りながら、空を見上げた。菫色の空を飾るのは、女人の眉のように繊細な月。月を遠慮がちに取り囲むように、星が弱い光をまたたかせている。