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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
自分なら、けしてヨンスのような真似はしない。酒場を出たら、真っすぐに女房の許に帰るだろう。今宵も一応はヨンスに一緒に帰ろうと言ってはみたものの、若い女に夢中になっているヨンスが言うことを聞くはずもない。
あとふた月もすれば、三人めの子が生まれるというのに、ヨンスの妻は今頃、さぞ心細い想いでいることだろう。そう思うと、家で良人の帰りをひたすら待つヨンスの女房が気の毒になってくる。
とはいっても、自分はヨンスではないので、どうしてやることもできないのだが。
俊秀はふと、道端に咲いている秋桜(コスモス)に眼を止めた。月明かりに濡れた秋桜は、うっすらとしたピンクに染まり、昼間の清楚な佇まいとは異なり妖艶ささえ感じられる。美しい花を眺めている中に、俊秀は他人の家庭のことで煩うのが馬鹿馬鹿しくなった。
あとふた月もすれば、三人めの子が生まれるというのに、ヨンスの妻は今頃、さぞ心細い想いでいることだろう。そう思うと、家で良人の帰りをひたすら待つヨンスの女房が気の毒になってくる。
とはいっても、自分はヨンスではないので、どうしてやることもできないのだが。
俊秀はふと、道端に咲いている秋桜(コスモス)に眼を止めた。月明かりに濡れた秋桜は、うっすらとしたピンクに染まり、昼間の清楚な佇まいとは異なり妖艶ささえ感じられる。美しい花を眺めている中に、俊秀は他人の家庭のことで煩うのが馬鹿馬鹿しくなった。