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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
 馴染みの酒場にも極秘裏に入手した酒が結構ふんだんに隠してあって、民は酒を茶だと言い、役人の眼をごまかしては、こっそりと愉しんでいた。
 皆、結構、法の網の目をかいくぐり、それなりにしたたかに生きているのだ。そこは、やはり、庶民の強みというものだろう。
 王さま、王さまが思っていなさるより、俺ら民は強いんですよ。
 今、ここに王さまがいたら大声で言ってやりたい。名ばかりの節約、度を過ぎた禁酒令など、所詮、民の暮らしの実態を知らない王さまの自己満足にすぎないのだと。
 事実、禁酒令が出てからというもの、今の国王に対する反感は日々、募るばかりである。王さまは理想主義者にすぎず、並みいる朝廷の大臣たちの専横を抑えるだけの力はない。
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