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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
弾かれたように面を上げた俊秀の瞳に、下級役人のお仕着せを纏った三十そこそこの男の姿が映じた。
「旨く逃げおおせたと思っているんだろうが、生憎とそうは問屋が卸さねえんだよ」
役人は前方を塞ぐように仁王立ちになった。
俊秀は咄嗟に回れ右をしたが、時既に遅かった。後ろにも同じお仕着せを着た男が立っている。年齢はもう一方より少し上くらいだろう。
「貴様、酒を呑んでいるな」
年上らしい役人が無表情に言った。どこかに感情を置き忘れてきてしまったかのような冷たい声だ。
「旨く逃げおおせたと思っているんだろうが、生憎とそうは問屋が卸さねえんだよ」
役人は前方を塞ぐように仁王立ちになった。
俊秀は咄嗟に回れ右をしたが、時既に遅かった。後ろにも同じお仕着せを着た男が立っている。年齢はもう一方より少し上くらいだろう。
「貴様、酒を呑んでいるな」
年上らしい役人が無表情に言った。どこかに感情を置き忘れてきてしまったかのような冷たい声だ。