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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
 万事休す、俊秀は唇を噛みしめた。もう、逃げ道がない。このまま役人たちに連れてゆかれれば、良くて縛りつけられて鞭打ち、下手をすれば、法を犯した罪で処刑されてしまう。それでなくとも、二年前に禁酒令が出て以来、役人の眼を掠めては酒を呑む者が多くなり、役所はそんな不心得者を何とか捕らえようと血眼になっている。そんな折も折、まんまと見つかれば、格好の見せしめとして処刑されるのは判っていた。
 俺も馬鹿だな。
 自分の愚かさ加減がつくづく恨めしい。それも、再々、酒を呑んでいるのならまだしも、数ヵ月ぶりに酒を呑んだその夜に役人に見つかるとは。
 俊秀はさもうなだれたようにうつむいた。
 役人の眼には、もう観念したように見えるだろう。そこが狙いだった。
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