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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
「殊勝な心がけだ。大人しく縛に付けば、お上にもお慈悲はある」
背後の若い方の役人が言ったその時、俊秀は咄嗟に身を屈め、脚許の土を掴み、眼前の役人に向かって思いきり投げた。
「くっ」
年嵩の役人が思わぬ目くらましを喰らわされ、怯んだその隙を逃さない。更に連続して思いきり体当たりをして役人を弾き飛ばすと、脱兎のごとく駆け出した。
「くそっ、待てッ。この野郎」
まだ眼を押さえてもんどり打つ同輩を尻目に、若い方が追いかけてくる。
一か八かの賭けに出てみたのだが、やはり、逃げ切るのは難しそうに思えた。役人に顔を見られないようにうつむいていたのは、何も殊勝な態度と相手を油断させるためだけではない。顔を憶えられては、万が一、逃げ切れても後々厄介なことになるからだ。
背後の若い方の役人が言ったその時、俊秀は咄嗟に身を屈め、脚許の土を掴み、眼前の役人に向かって思いきり投げた。
「くっ」
年嵩の役人が思わぬ目くらましを喰らわされ、怯んだその隙を逃さない。更に連続して思いきり体当たりをして役人を弾き飛ばすと、脱兎のごとく駆け出した。
「くそっ、待てッ。この野郎」
まだ眼を押さえてもんどり打つ同輩を尻目に、若い方が追いかけてくる。
一か八かの賭けに出てみたのだが、やはり、逃げ切るのは難しそうに思えた。役人に顔を見られないようにうつむいていたのは、何も殊勝な態度と相手を油断させるためだけではない。顔を憶えられては、万が一、逃げ切れても後々厄介なことになるからだ。