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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
死に物狂いで走っていたら、ふいに曲がり角から白い手が突き出てきて、俊秀は愕きのあまり悲鳴を上げそうになった。
大きな声を出せば、見つけてくれと言っているようなものだ。眼を見開いている彼の前に、スと進み出たのは美しい妙鈴の娘であった。
月明かりに濡れた黒い瞳が冴え冴えと輝き、強い光を放っている。年の頃は十五ほどか。木綿のチマチョゴリはけして上物ではないが、きちんと洗濯され、若い娘らしい明るい色目が娘の可憐さとよく合っている。
「こちらへ」
娘の玲瓏とした声音に聞き惚れている暇もなく、俊秀は手を掴まれ、走った。
「君は誰だ?」
問いかけても、娘は何も応えず軽やかに走り続ける。どれほど走っただろう。多分、そう長い刻ではなかったはずだ。
大きな声を出せば、見つけてくれと言っているようなものだ。眼を見開いている彼の前に、スと進み出たのは美しい妙鈴の娘であった。
月明かりに濡れた黒い瞳が冴え冴えと輝き、強い光を放っている。年の頃は十五ほどか。木綿のチマチョゴリはけして上物ではないが、きちんと洗濯され、若い娘らしい明るい色目が娘の可憐さとよく合っている。
「こちらへ」
娘の玲瓏とした声音に聞き惚れている暇もなく、俊秀は手を掴まれ、走った。
「君は誰だ?」
問いかけても、娘は何も応えず軽やかに走り続ける。どれほど走っただろう。多分、そう長い刻ではなかったはずだ。