この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚

周囲の光景に何となく見憶えがあり、ここら一帯はもう町外れであることは判った。似たような粗末な家ばかりが建ち並んでいるその一つに、娘は入ってゆく。果たして、このような深夜に勝手に入っても良いものかと躊躇していると、娘が振り返った。
「早くしないと、役人が来ます」
娘の言葉は、唐突に俊秀を現実に引き戻す。彼は慌てて娘に付き従い、家に飛び込んだ。
まさに間一髪のところで、家のすぐ手前を先刻の役人たちの声が素通りしていった。
「畜生、どこに消えやがった?」
「探せ、ここら一帯を隈無く探すんだ。たいした時間は経ってないから、まだ遠くへは行っていないはずだ」
口々に言い合いながら、声が遠ざかってゆく。
「早くしないと、役人が来ます」
娘の言葉は、唐突に俊秀を現実に引き戻す。彼は慌てて娘に付き従い、家に飛び込んだ。
まさに間一髪のところで、家のすぐ手前を先刻の役人たちの声が素通りしていった。
「畜生、どこに消えやがった?」
「探せ、ここら一帯を隈無く探すんだ。たいした時間は経ってないから、まだ遠くへは行っていないはずだ」
口々に言い合いながら、声が遠ざかってゆく。

