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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
「いけません」
ハッと振り向くと、娘が微笑んでいた。
「今、出てゆけば、折角逃げ切れたのが無駄になってしまいますよ?」
「しかし」
若い女一人の家に居座るわけにもゆかないと言外に視線で語ると、娘は更に笑みを深くした。
「良いのです。あなたが用心しなければならないような類の方ではないことは、よく判っておりますから」
その何げない科白にも、俊秀は引っかかりを憶えた。これでは、まるで娘がやはり俊秀をずっと前から知っていたような口ぶりではないか。
ハッと振り向くと、娘が微笑んでいた。
「今、出てゆけば、折角逃げ切れたのが無駄になってしまいますよ?」
「しかし」
若い女一人の家に居座るわけにもゆかないと言外に視線で語ると、娘は更に笑みを深くした。
「良いのです。あなたが用心しなければならないような類の方ではないことは、よく判っておりますから」
その何げない科白にも、俊秀は引っかかりを憶えた。これでは、まるで娘がやはり俊秀をずっと前から知っていたような口ぶりではないか。