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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
 東の空がわずかに白んでいる早朝、家々はまだ深い眠りに沈んでいる。
 ひっそりと帰ってゆく俊秀を、娘は戸口に佇み、いつまでも見送っていた。
 あの娘にまた逢える。そう考えただけで、俊秀は歓びのあまり、踊り出したい気分だ。その時、彼はふと、まだ娘の名前すら知らないことに今更ながらに気づいたのだった。
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