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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
 本当はすぐ翌日にでも訪れたかったのだが、俊秀はとにかく三日は我慢しろと自分に言い聞かせた。
 あまり性急な男だと思われても困る。四日めに漸く娘の家を訪れるのを自分に許した。いつも露店を出す際、隣り合って店を出している小間物屋で求めた簪を懐に入れ、持っている数少ない服の中では最も粗末ではないパジチョゴリを選んだ。
 けして上等ではないが、これなら継ぎも当たっていないし、きちんと洗濯もしてある。娘の家の前では、一旦立ち止まり、服についてもいない埃が気になって、しきりに手ではたいた。
「ご免下さい。こんにちは」
 両開きの扉越しに声をかけてみても、いらえはない。
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