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九尾狐(クミホ)異伝
第2章 突然の求婚
三日前、この布はどうして巻いているのかと訊ねた彼に、彩里は火傷をしたのだと応えた。
見たところ、細い手首には、まだうっすらと紅い引き攣れたような跡が残っている。これが恐らく火傷の跡なのだろう。だが、火傷の跡というよりは、何か鋭利な刃で深く抉られてできた傷痕のようにも見える。
「まだ痛むか?」
優しく問うと、彩里は黙って首を振る。
その頼りなげな風情に、俊秀は思わず愛しさが込み上げ、彩里の手首にまだ依然として残る紅い傷痕にそっと唇を当てた。
「早く傷痕がなくなると良いな」
一瞬、彩里の白い身体が強ばったことに、俊秀は気づかなかった。愛しい女を初めて自分のものにした歓びで、彩里の表情の微妙な変化に頓着するゆとりはなかったのだ。
見たところ、細い手首には、まだうっすらと紅い引き攣れたような跡が残っている。これが恐らく火傷の跡なのだろう。だが、火傷の跡というよりは、何か鋭利な刃で深く抉られてできた傷痕のようにも見える。
「まだ痛むか?」
優しく問うと、彩里は黙って首を振る。
その頼りなげな風情に、俊秀は思わず愛しさが込み上げ、彩里の手首にまだ依然として残る紅い傷痕にそっと唇を当てた。
「早く傷痕がなくなると良いな」
一瞬、彩里の白い身体が強ばったことに、俊秀は気づかなかった。愛しい女を初めて自分のものにした歓びで、彩里の表情の微妙な変化に頓着するゆとりはなかったのだ。