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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
月夜の変化(へんげ)
俊秀はふと夜半に喉の渇きを憶え、目ざめた。床の上に身を起こすと、何げなく隣を見て愕然とする。傍らに眠るはずの彼の愛しい妻の姿はなく、薄い粗末な夜具はもぬけの殻であった。
そっと腕を伸ばして夜具に触れると、しんと冷え切っている。妻が寝床を出ていってから、かなりの刻を経ていることを示していた。
俊秀は両開きの扉を開けると、表に出てみた。家の前は狭い道になっていて、両隣には似たような作りの家が軒を連ねている。どの家もかなりの夜更けとて、深い眠りの底にたゆたっていて、灯りはついていない。
時折、犬の遠吠えがはるかに響いてくるのが何か焦燥感と寂寥感をかき立てるようだ。
俊秀の不安は次第に大きくなってゆく。
俊秀はふと夜半に喉の渇きを憶え、目ざめた。床の上に身を起こすと、何げなく隣を見て愕然とする。傍らに眠るはずの彼の愛しい妻の姿はなく、薄い粗末な夜具はもぬけの殻であった。
そっと腕を伸ばして夜具に触れると、しんと冷え切っている。妻が寝床を出ていってから、かなりの刻を経ていることを示していた。
俊秀は両開きの扉を開けると、表に出てみた。家の前は狭い道になっていて、両隣には似たような作りの家が軒を連ねている。どの家もかなりの夜更けとて、深い眠りの底にたゆたっていて、灯りはついていない。
時折、犬の遠吠えがはるかに響いてくるのが何か焦燥感と寂寥感をかき立てるようだ。
俊秀の不安は次第に大きくなってゆく。