この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
俊秀はこの家から町の市場に通い、露店を出して今までどおりに商売を続けた。一方、彩里の方は家で仕立物の内職をしている。まだ娘盛りで綺麗な格好をしたいだろうのに、黙って他人の晴れ着を縫う姿に、彼は亡くなった母親の面影を重ねていた。
彼の母もまた死ぬまで自分は晴れ着などにも縁のない貧乏暮らしだったのだ。母もまた愚痴一つ零さず、いつも背を少し丸めるようにして他所さまの美しい衣装を縫っていた。
ここに来てから、俊秀は裏の空き地を簡単な柵で囲い、そこに畑と鶏小屋を作ったのだ。
俊秀は細く扉を開け、そっと外を窺った。
満月が銀色に妖しく輝く宵である。それにしても、月とはつくづく摩訶不思議だ。禍々しいほど紅く染まった月、薄蒼く染まった清楚な月、夜毎に全く違った貌を見せる。
彼の母もまた死ぬまで自分は晴れ着などにも縁のない貧乏暮らしだったのだ。母もまた愚痴一つ零さず、いつも背を少し丸めるようにして他所さまの美しい衣装を縫っていた。
ここに来てから、俊秀は裏の空き地を簡単な柵で囲い、そこに畑と鶏小屋を作ったのだ。
俊秀は細く扉を開け、そっと外を窺った。
満月が銀色に妖しく輝く宵である。それにしても、月とはつくづく摩訶不思議だ。禍々しいほど紅く染まった月、薄蒼く染まった清楚な月、夜毎に全く違った貌を見せる。